スタンダードエッジワイズ矯正の仕組み

歯を動かすためには、アーチワイヤーを使って歯に一定の力を与えることが必要です。
歯並びはでこぼこだったり、捻れていたり、傾いていたりとそれぞれが別々に並んでいますので、そのでこぼこや捻れ、傾きに沿ってアーチワイヤーを曲げこんで調整する必要があります。
スタンダードエッジワイズ法は、規格品をはめるだけのテクニックとは違い患者さんの歯並びに沿ってアーチワイヤーを微細に調整していきます。また、スタンダードエッジワイズ法で使用するブラケットのスロットは一定の深さ・角度なので、アーチワイヤーを通じて術者の意図がそのまま歯に伝わり、歯並びやかみ合わせを三次元的に自由自在に作り上げることができるのです。

どうして歯は動くの?

歯は【歯根膜】という繊維でできた膜に守られて顎の骨に固定されています。
矯正装置で歯に弱い力を恒常的に加えると、歯を囲んでいた歯根膜は、押し付けられた側は縮み、逆側は引っ張られて伸びます。

歯根膜は繊維の幅のバランスを元に戻すため、縮んだ側は【破骨細胞】によって顎の骨を溶かします。また、伸びた側は【骨芽細胞】によって新しく骨を作ります。

こうして繊維のバランスが元に戻ると同時に力が加えられた方向へと歯が移動します。これを少しずつ繰り返しながら、歯は動いていくのです。

矯正装置の名前を知ろう!

◆ ブラケット

歯に直接とりつける矯正器具。形や大きさ、特徴、材質は多種多様で、金属製のもの以外に目立ちにくい透明のものもあります。ブラケットはそれだけでは意味がなく、ワイヤーを組み込むことで歯を動かす治療が始まります。

◆ スロット

ブラケットに刻まれた溝で、アーチワイヤーを通すのに使用します。

◆ アーチワイヤー

ブラケットに組み込む針金。このワイヤーは矯正治療の生命とも言われるほど重要な役割を果たします。術者の治療上の意図はすべてこのワイヤーの曲げ方にかかっており、このワイヤーがブラケットに組み込まれることで、術者の意図どおりに歯が移動します。

◆ モジュール

ワイヤーをブラケットに固定するためのゴム。通常は目立たない透明のものですが、最近はあえてカラーのモジュールにすることで個性的に楽しむこともできます。

◆ リガチャーワイヤー

ブラケットにワイヤーを固定するための細いワイヤー。

◆ チェーンエラスティック

歯と歯の隙間を詰めるためのリング状のゴム。弱い力を継続的に加え歯を移動させます。

◆ バンド

歯を動かす際に大臼歯には強い力が加わるため、チューブがはずれないよう金属でできたバンドを歯にかぶせるように装着します。アーチワイヤーを通すためのチューブが取り付けられています。

◆ チューブ

奥歯につけて、アーチワイヤーの端を固定するためのものです。

◆ エラスティック

歯を動かすために用いるゴム。いろいろなサイズと力の大きさのものがあります。
上下のフックにひっかけて、歯を前後または左右に移動させる補助をします。

スタンダードエッジワイズ法・矯正治療の進め方

基本的な治療段階(上下第一小臼歯抜歯症例)

1.レべリング

顎の大きさに比べ個々の歯が大きいなど、必要性がある場合は抜歯を行います。その後、装置を装着し、まずは歯並びのでこぼこを大まかに整えていきます。この時、第一大臼歯(奥歯)を後ろに倒し気味(アップライト)に傾斜させることで、前歯を動かす際の牽引力の力点にします。


2.犬歯遠心移動

犬歯を後方に移動させることで抜歯部位を閉鎖します。そのためには、上顎では第一大臼歯と犬歯が引っ張り合い、犬歯だけ後方に移動させなければいけません。スタンダードエッジワイズ法では、第一大臼歯の手前に小さなワイヤーのループをつくることで、大臼歯が動かないように食い止めることができます。また、始めの段階で、第一大臼歯を傾斜させてありましたので牽引力が強く犬歯を引っ張る大きな力になります。


3.前歯舌側移動

次に、前歯の傾きを調整し(舌側に移動させる)少しずつ前歯を後方へ動かします。
この際、前歯と犬歯の間にループをつくります。ループは開いた状態で組み込まれ、閉じようとする力を利用して、歯に力を加えます。
この段階でも、第一大臼歯は強い牽引力として働き、前歯を後方へと引っ張ります。


4.仕上げ

最後に、仕上げの調整をしていきます。
バランスの美しさ、機能としてのかみ合わせを微細に整え仕上げます。
仕上がりの精密さは、スタンダードエッジワイズ法だからこその特長と言えます。


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